アルミのオイルパンに銅ワッシャーを使うと腐食するか?

先日、オイル交換をした。当然、ドレンボルトのワッシャー(ドレンパッキン)も交換する。
特に何も考えずに銅ワッシャーを嵌めてしまったが、よく考えるとウチの車のオイルパンはアルミ合金製。異なる金属なのに電蝕(異種金属腐食)は起きないのだろうか?

高校で化学を選択した人は知っていると思うが、金属には「イオン化傾向」というものがある。原理には詳しくないので説明は別の人に譲るとして、要するに異なる金属を接触させるとイオン化傾向の大きい方(陰極側)が腐食するのである。これを電蝕(異種金属接触腐食)という。

アルミと銅だと、アルミが陰極側なので、アルミのオイルパンが腐食していく……これは、まずい!

しかし、ここで、高校の授業をさらに思い出す。アルミには安定した不動態被膜があったはずだ。アルミは空気中に置くと、すぐに表面が厚い不動態被膜(酸化被膜)で覆われる性質がある。この酸化被膜は耐食性が極めて良い。文献によると、腐食が起きるのはCl-(塩化物イオン)に触れるときだけだそうである。オイルパンの表面は酸化被膜に覆われているので、銅ワッシャーと接触しても腐食しないというわけだ……よかった!

しかし、ここでさらに思い出す。道路には塩化物イオンに触れる機会がある。それは「融雪剤」である。融雪剤の主成分は塩化カルシウム(CaCl)。水に溶ければCl-(塩化物イオン)となる。これがオイルパンに付けば電蝕が起きる……まずい!

しかし、ここで思い返す。そもそも、融雪剤の撒かれた道を走れば、車体の全てが錆びる。塩化物イオンは、鉄の錆の発生を促進する触媒でもあるからだ。アルミのオイルパンと銅ワッシャーの異種金属腐食なんて細かなことを気にするより、まずはフレームやマフラーの錆びを気にした方が良い。(こまめに洗車をすれば、電蝕対策にもつながる。)

【結論】融雪剤が付着すれば異種金属腐食が起きるが、気にするほどではない。
(そもそも異種金属腐食でオイルパンが使えなくなったという話は聞いたことがない。)

心配なら、ドレンボルトを締めた後に、防錆スプレーでも吹いておけばよい(水が付着しなければ異種金属腐食は生じない)。

……でも、アルミのワッシャーの方が安心ですね。