令和4年5月1日(日)、善通寺市民会館ホール/本山寺客殿にて東京大学/本山寺整備委員会による常時微動測定結果の報告会があった。登壇者は楠浩一(東京大学教授)・藤田香織(同)・多田善昭(建築家)・西岡聡(文化庁)・岡田恒男(東京大学名誉教授)の各氏。善通寺五重塔は国重要文化財に、本山寺五重塔は市有形文化財に指定されている。まず、両塔の概略についての説明の後、耐震診断の結果、必要な耐震性能は有しているということと、常時微動測定からも耐震診断用のモデルの妥当性が示されたとの報告があった。
本報告会で、特に話題が集中したのは心柱が耐震上有効かどうかについてである。両塔とも、心柱が上部より垂下される懸垂式の塔であるが、結論としては、心柱は積極的な耐震要素とはなっていないものの、阻害しているということもないということであった。ただし、常時微動測定の範疇を超える大きな揺れに見舞われた際にどのような挙動を示すかについては、確証がないとの留保付きであった。(この点については、楠・藤田両先生がたびたび注意を促していたにも関わらず、その後の一部報道で、心柱が耐震要素として寄与していると認められた等の記事が散見されたのは残念であった)
本山寺五重塔は、近年、解体修理が行われ、A4判336頁の大部な報告書が発行されている。修理工事報告書として必要な事項は網羅しながらも、修理に至る経緯や竣工式の様子など、関係者の「想い」にフォーカスした記事が多い異色の本である。指定区分にかかわらず、今後もこのような報告書が多く編まれることを期待したい。
(編集子)