はじめに
ポストに届くたびに、図書館の新着棚を通りかかるたびに、多少の興奮と少しの羨望をもって眺めた建築系雑誌が次々と失われています。美術系の雑誌もどんどん失われています。確かに、多くの新しいメディアも生まれています。SNSやブログを追い続けなければ、世間の動向から取り残されてしまうのではないかと思うほどです。しかし、そこにおいてきちんと成熟した議論の蓄積がなされているでしょうか。
私たちの周りには、記録されるべきこと、議論されるべきこと、有益で興味深いことが山積しているはずなのに、それを取り上げ、問いかけ、記録する場がないのは、あまりにも哀しいことです。
『季刊みもざ』は、そのような現状を鑑みて、広く開かれた批評と言論の場として創刊されました。本誌は、従来の建築史学が対象とするフィールド/基本姿勢を堅持しつつ、現代そして将来まで視程を広げるために「建築(史)学」を名乗っています。
情報を後に残すためには、やはり紙に定着することが非常に重要です。一度紙面に定着されさえすれば、それがどのように粗末なものでも、半世紀の時を超える存在となります。
また、私たちは、積み上げた成果を永く利用可能なものとするために、 以下の取り組みをしています。
- 完全フリーアクセスジャーナルです(ホームページにて全文をPDFで公開しています)。
- 全国の公共図書館、大学の建築系研究室、アートギャラリー等に配布しているほか、イベントへの参加を通じて普及と拡散を図っています。
個人の好みにより情報を取捨できる時代ですが、誰しもが考えなければならない課題はあり、そのためには共通の議論の場が必要です。『季刊みもざ』は、同時代の実践と試行錯誤を記録する、できる限り分厚い、熱気に満ちた書となりたいと考えています。
この界隈に一言をお持ちの皆様のご参加のほどよろしくお願いいたします。
(編集子)
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Editorialは、書評・展覧会評等を各界の新進気鋭の論者に執筆いただくコーナーです。
バナー画像:『清親畫帖』(小林清親画)国立国会図書館デジタルライブラリー(保護期間満了)